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好きなことを好きなよーに書き散らし中。 色々オタぎみなので、取り扱いには要注意かも?
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今日はやっておかないと! と!
なP3のターンです。
だって愛しのオルフェウス様初登場。かわいいタナトスも初登場。
P3のペルソナデザインてすごく好きなのです。
というわけでやっちまうぜ。




 反射的に手に取ってしまった「これ」が一体何なのかは、分からない。
 それでも、凌はゆかりがその手から落とした物を掴んでいた。
 見た目はどう贔屓目に見ても、銃を模した物にしか見えない。
 銃になど興味を持ったことはなかったから、レプリカなのか本物なのかの区別はつかなかった。

 ゆかりがそうしていたように、銃口を頭に押し付ける。
 ただし、額にではなくこめかみに。
 触れる銃口はひやりと冷たく、無機質なほどに硬かった。
 ゆかりがそうしていたのを真似たのに、深い考えがあったわけでは決してなかった。
 ただ、この緊迫した場面でそうしていたぐらいだから、何がしかの意味があるのだろうと判断しただけだ。
 こうすることが、今の状況を打破するきっかけになるなら。
 とてもではないけれど、迫りくる異形の存在と対峙し渡り合える気はしなかった。

「……っ」

 死ぬような事にはならないだろう、と思う。
 だがこの行為が何をもたらすのか、それは分からなかった。
 指先が冷たい。
 ここまで駆け上がってきたからだけが理由ではなく、鼓動が早まっている。
 口腔内が乾いているのが感じられた。
 緊張、しているらしい。

 喘ぐように、逸る気持ちを落ち着かせようと肩を上下させながら息をした。
 引き鉄にかけられた指がひどく重いものに感じられる。
 異形の、いっそ化物と称していいかもしれない存在が音を立てて近づいてくる。
 引け。早く。
 迷っている場合でもその暇もない。
 さあ、早く。
 死と向き合え。

 冷えた指先と反比例するように、頭の中では激しく警鐘が打ち鳴らされていた。
 この指を引くだけ、で、いい。
 息を吸い込み、引き鉄を引いた。
 死が、その指を伸ばしてくる。
 知っている。引きずり出される、解放される、この感覚を。
 ひとときの死が訪れる。
 そうだ、呼べ。ペルソナを!

 瞬間。じゃらりと音がしたような、気がした。
 鎖を引きずるような、巻き取るような音。
 同時に頭の中が真っ白になる。
 目前に迫る異形も、床に倒れ込んだゆかりも、引き鉄を引いた自分も。
 何もかもが遠のき、その端から溢れ満たしていく何かがある。
 それが何なのかは分からないのに、ただ心地いいような感覚に。

 凌の唇は、僅かながらも確かに、弧を描いていた。

 自分の中から何かが放たれていくのと同時に。入ってくる。
 奇妙な感覚だった。だが嫌悪は湧き上がらない。
 安全かどうかも分からない銃で自身の頭を撃ち抜いたばかりだというのに。
 死んだ、その傍から起き上がる、みたいな。
 我ながら要領を得ない表現だとは思うのだが、この感覚を上手く説明出来る言葉は見つからない。

 そうして銃を撃った後に、いやほぼ同時に現れた、もう一体の異形。
 襲ってきた影のような物とは違い、些か人に近い形をしているが一目見て人間ではないのだと知れる。
 だが、それに対して緊迫感はなかった。
 見た瞬間に、理解したからだ。誰からの説明もなかったのに、まるで天啓であるかのように。
 現れたそれが、自分と同じであることを。
 凌の身の内から生じた力を具現化した、とでも言えばいいのかもしれない。
 言い様はともかくとして、紛うことなくその影は凌自身。

「……オルフェウス」

 無意識に言葉が口をついていた。
 それが身の内から発言した存在の名なのだと、教えられずとも分かった。
 オルフェウスが、何か言っている。
 その声は耳に届いているのに、まるで遠くで鳴っている音のように不明瞭にしか聞き取れなかった。
 意識が、高揚している、ような。

 現状は動いた。さあ、次に何をする。
 これがあの異形に対抗する力なのだろうか、と考えたその次の瞬間だった。
 ぎしり、と頭が痛んだ。
 呼応するようにオルフェウスも動きを止める。

「っ、ぐ、あ、あああっ?!」

 叫んだのは自分だったのかオルフェウスだったのか、分からなかった。
 熱い。
 体がではない。言うなれば意識が、急に熱くなった。
 燃えるように、凌の中の何かを焼き切るように。
 咄嗟に頭を押さえる。
 イタイ。アツイ。
 必死で堪えようとするが、何をどうすればいいのかすら分からない。
 呼んでいる。出ようと、している。
 何故そう思うのか分からないままに、痛む頭の端がひどく冷静にそんな言葉を紡いだ気がした。

 引き裂かれるような痛み。
 それが痛みなのかどうかすら、分からない。
 ただ熱い。
 オルフェウスの、内側から。
 いや、オルフェウスを食い破って。姿を現した、もう一つの影が。
 棺を背負い、黒い服を纏ったそれが、咆哮をあげた。
 対峙する敵を前に奮起したものか、それとも歓喜か。

「あ、あ、うああ……っ」

 視界がぶれる。
 何が起こっているのか分からない。
 黒い影。タナトス。
 月を背に、ふわりと跳んだ。
 俺は、この光景を知っている。
 切れ切れの意識の中で呟かれた言葉は、凌自身にも届かなかった。

 異形を斬り、潰し、また吼える。
 その姿がぶれ、オルフェウスに戻った。
 肩で息をしながら、凌はゆっくりと屋上を見渡す。
 痛みと混乱の中で制服の胸元を掴んでいた手を、そっと外した。
 結構な力で握っていたから、きっと皺になっているだろうな、なんて場にそぐわない事を考えてみたりして。

「終わった……の?」

 ゆかりの言葉に応える余裕はなかった。
 異形の残党、とでも言うべきか。黒い影が二つ、ひたひたと音をたて近づいてきたからだ。
 だが、先の大きな影を見た今では近づく影がひどく小さく感じられる。
 凌はゆかりを庇うように前へ進み出た。

「……オルフェウス」

 呟き、今一度銃で頭を撃ち抜いた。
 実際に弾が出ることはないとは言え、引き鉄を引いているのだから撃っているのと同じだろうと思う。
 引き鉄に、そして凌の意思に呼応するようにオルフェウスが姿を現す。
 先のように暴走することはなかった。
 オルフェウスは凌の手足のように動き、鮮やかに影を二つ、消滅させたのだ。

 疲れた。
 不可抗力とは言え、叫んだのなんてどれくらいぶりだったろうか。
 軽く咳をして、もう大丈夫だろうかと耳を澄ませる。
 影が蠢く音は近くでは聞こえないようだった。
 もういないよ。
 たぶん、大丈夫。
 そう思った途端、力が抜けた。
 がくりと膝が落ちる。

 ごめん、疲れたみたいだ。
 そう言いたかったのに、口を開くどころか起き上がることさえも出来ないまま。
 凌の意識は、闇に沈んだ。


END


ペルソナ発動おめでとー。な主人公。
予想外に長くなってしまい9日中に書き終わりませんでした。
が、スイマセン日付操作しまっす!(自己申告)
二次っつーか普通にゲームで起こったイベントを書いただけみたいになってしまった……
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